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2008年5月13日

主張に満ちた経済史

戦後日本経済史野口悠紀雄著『戦後日本経済史』(新潮選書、2008年)は、そのなんの色気もないタイトルから想像する淡々とした歴史の記述からは、かなりかけ離れた内容である。主張に満ちた、ときに激しい怒りや嘆きさえぶつけられている、面白い読み物だった。

野口さんの本かあ、というだけで深い理由もなく手に取ってみたのだが、「経済史」と名のつくものを初めて読んだ気がする。しかし、おそらく多くの出来事がこの本では割愛されているのだろうと思う。というより、著者は戦後日本の経済史を網羅しようということに価値を置いていない(そんなものはほかにもいくらでもある)。

この本を貫いているのは、戦時中に端を発する経済体制が今でも維持されているということ。その変わらぬ体制に関する歴史に焦点が当てられているわけだ。金融機関に依存した資金調達のやり方、株主の影響を受けず内部の論理で動く経営、外国資本をことさら排除しようとする国の方針、土地本位に動く経済、……。戦時経済体制を維持したことで、バブルへと向かう過程では歯止めがきかず、バブル崩壊後も新しく生まれ変わることができなかった。

野口氏の主張に対しては官僚機構を中心に異論がありそうだが、意識のある国民の多くは、大きくこの国は変わらなければいけないのに、政治ではいつも同じようなごたごたが続くだけで、なんら国の仕組みは変わりそうもない、と感じているのではないだろうか(たとえ、それが漠然としたものであったとしても)。それがなぜか、ということを、この本はいくらか語っているのだと思う。

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