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2008年4月26日

漱石のメッセージ

『漱石文明論集』(岩波文庫)を読んで感じること。

まず第一に、西洋というものに対峙して、漱石自身がいかに悩み苦しんだかということ。漱石=神経衰弱だが、たぶんにそれは西洋や西洋化と関係したはずである。

当時の西洋化の波が日本国や日本人一人ひとりに与えたインパクトは、おそらく現代人には想像のつかないぐらいの規模であったに違いない。そのなかで、一方で西洋を代表し、他方で西洋に立ち向かったこの知識人の悲劇はいかばかりであったろう。

次に、確固たる「個」の独立を叫んでいること。ふらふらと根なし草のように西洋化や文明、イズムというものに振り回されるのではなく、「人間とは何か」ということを追求すべきであることを教えている。

これは「私の個人主義」だけの主題ではなく、「現代日本の開化」や「中味と形式」「模倣と独立」などでも見出すことができる。どれだけ世の中が変わろうとも、結局は一人ひとりがいかにこの人生を生きていくべきか、ということに行き着かざるを得ないことを考えるとき、彼のメッセージは現代人にとってもまったく色褪せてはいないことに深い感動を覚える。

第三に、人間を見つめる目が大らかであり、また彼自身に尊大なところが何もないこと。これもやはり、「個」を真摯に追求していった姿勢のなかで、自ずと附随してきたものであろうと思う。

このことは、以前にも書いた(コミュニケーションに余韻がないこと)。

ますます人間臭さが生活のなかから取り払われつつある今、漱石の言葉は私たちに光を放って迫ってくる。

マンデリンの本棚

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