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2006年4月21日

高速バスにひとり、そして加納クレタ

夜、高速バスに乗った。天候が悪かったせいか、なんと僕の他には誰も客がいなかった。よく利用している路線だが、こんなことは初めてだ。

乗車するバス停で、入れ違いに何人か降りた。整理券を取って、さてどこに座ろうかとバス全体を眺めてはじめて、残っている客が自分ひとりであることに気づく。思わず「誰もいない」と呟いてしまった。前から眺めた車内の光景には、寂寥感が満ちていた。今目を閉じても、そのとき見た誰もいないシートの列がありありと浮かぶ。予想外だったためか、なんだかどこか間違った場所へ来てしまったような気になった。

大きなバスにひとりぽつんと座って、夜の闇の中で揺られているのは、あまり気分のいいものではない。何かいやなことが起こるのではないかと緊張してしまう。

運転士が、どこまで行くのか、休憩をするかどうか尋ねてきた。行先と休憩はいらない旨を告げると、「じゃあ、休憩をせずに、途中のバス停もとばして、まっすぐ目的地まで行きましょう」と、なかなか物分かりのいいことを言ってくれた。僕が乗車したバス停のあとは降車するバス停しかないので、こんなことができるのだ。結局、ふだんより15分ほど早く到着した。

話は変わるが、バスに乗る前、村上春樹の『ねじまき鳥クロニクル』第2部を読み終えた。ずっと前に友人が、この本が面白いとちらっと言ったことが記憶に残っていて、いつか読もういつか読もうと思い続けていた。この前、彼の『意味がなければスイングはない』を読んで文体がとても気に入り、それが直接のきっかけとなって、遅まきながらようやくこの本を手にとってみた。第1部は、前の日曜日に一気に読んだ。この先どうなるんだろう、と誘い込まれて、第2部も、時間があれば何を差し置いてもというぐらいの勢いで読んだ。でもまだ第3部がある……。

バスを待っている間、読後の余韻が残っていた。登場人物のひとり、謎の女(出てくる女性はみんな謎だけど)加納クレタのことを考えていた。バスが到着する。降りる人がいたので乗降口の下で待っていると、はっきりした顔立ちの日本人離れした美しい女性が降りてきた。きれいだなと思って下から見惚れていたら、その女性は真っ直ぐ僕のほうへ突っ込んでくるように降りてくる。えぇ?と思った次の瞬間、目の前数十センチのところで、彼女は突然身をかわして、僕を横切った。

残り香が漂っている。今の女性の消え方がなんだか、意識と現実のなかで錯綜して登場する加納クレタのようだった。

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