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2006年2月20日

臼杵の印象

この週末、所用で大分県の臼杵へ行った。時間があったので、市内をゆっくりと散策した。

臼杵は不思議な土地だ。時代が幾重にも交差している。

二王座歴史の道 平安から鎌倉の頃にできたという国宝の石仏群が外れの方にある。街自体は、戦国のキリシタン大名・大友宗麟がここに城を構えてから形成されていった。南蛮貿易で栄え、異国情緒あふれる街だったという。江戸期は稲葉氏によって統治され、その頃の城下町の通りが一筋残っている(右の写真。「二王座歴史の道」)。

しかし、歩いてみてもっとも感じるのは、昭和の雰囲気だ。僕がかすかに記憶している、もしくはもっと古い戦後日本の田舎の町並みが、臼杵にはそのまま残っている。30年か40年昔にタイムスリップしたら、きっと全国にこんな田舎町があっただろうと思われる、そんな場所だ。正直言って、昭和というのは決して美しいものではないなと思った。

とあるギャラリーでコーヒーをいただいた。他に誰もいなかったので、お店をやっているお兄さんとしばし懇談。

彼、生まれも育ちも臼杵だそうだ。子どもの頃、辺りには長屋がたくさんあったのだという。最近、市が観光に力を入れていて観光客が増えているとか、この建物は築200年以上でけっこう柱が傾いているとか、ギャラリーの絵はお父さんが描いたものだとか、そんな話をした。「僕はどうしようもない息子で」と言っていたが、いえいえ、とっても楽しい会話ができました。

そうそう、生まれて初めて、グラスでホットのコーヒーを飲んだ。「どうしてグラスなんですか?」と聞くと、「ただ、家で飲むのと違った感じで飲んでもらいたいから、それだけですよ。取っ手がないから、みんな飲みにくいと言うんです」と笑って答えていた。

野上弥生子文学記念館 このお店を紹介してくれたのは、すぐそばにある野上弥生子文学記念館(右の写真。野上弥生子は臼杵の生まれ)の受付のお姉さん。ぱっちりとした目と、鼻にかかった声が印象的な美しい女性で、入口を入った瞬間、虚を衝かれた感じだった。受付に似合わないなあと思った。

元来暇な仕事なのだろう、帰り際見ると、分厚い単行本を読んでいた。その姿を見て、「いや、やっぱりこの人は、ここの受付にぴったりの人だな」と思った。品のある女性が本を読んでいる姿は、いっそう美しい。思わず声をかけたくなって、「どこかおいしいコーヒーが飲めるところありませんか?」と尋ねたのだった(でも、コーヒーが飲みたかったのも確かだ)。

このふたりの存在は、僕の臼杵の記憶のなかで強く残るだろう。一期一会かもしれないが、今度訪問したときに、また会えたらなと思う。

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