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2006年2月17日

女性は仮面をかぶる

初対面の看護士の女性と、化学物質の毒性についてしゃべっていたら、化粧に話が及んだ。

「女性は毎日、石油を顔に塗りたくっているようなもんですね。たいへんだ」
「でも、楽しいんですよ。別人になるんだから。その日の気分でメイクを変えたりしてね」
「へぇ、じゃあ女性っていうのは、いつも仮面をかぶっているわけだ」
「そうですよ、その仮面がたくさんあるんです」

彼女とのやり取りは始終こんな感じで、小気味好かった。とくにこのくだりがとても気に入った。

その快さを消さないために、続けて『仮面の告白』の話をするような野暮なことはしなかった。でも……

仮面をかぶるから、真の自分を素直に出せるのだろうか?
仮面をかぶっているからその人格も偽りで、本当の自分ではない自分を演じることができるのだろうか?
告白は、本当の告白か嘘の告白か?
そもそも本当の自分なんて自分でわかるんだろうか?
意識的に仮面のつもりが、無意識では仮面でなかったりして?
仮面と告白は結びつくのか?

「仮面の告白」というタイトルはうまくできていて、考えれば考えるほどややこしくなる。いろんな見方があるようだが、どこまでいっても正解なんてない。彼女の「仮面」という言葉に引きずられて、そんなことを後で考えていた。

「仮面がたくさんあるんです」と言ったこの女性が、仮面をかぶることをどうとらえているのかはわからないし、わかったとして、それを文学と結びつける必要もない。ただ、「楽しいんですよ」と言ったときの、彼女の声の響きと表情は、本当に楽しそうだった。その場面を思い出すたびに、軽やかな気分になる。

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