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2006年1月31日

「他者」を仮想する力

前のブログから読んでいただいている方は、僕が時々、「他者」について書いていたことを記憶されているかもしれない。最近、茂木健一郎氏の近著『脳と仮想』を読みながら、あらためてこの他者について考えさせられた。

人はよく、相手の心が「わかった」と思う。しかしそれは、わかったのではなく、「わかったことにする」のだ。なぜなら、他者の心など、絶対的にわかりようがないからだ。理解しているつもりが、本当は誤解でしかないかもしれない。

こういう議論のあと、茂木はこの章を次のように結んでいる。

私たち一人一人にとっての絶対与件は、世界が根本的に断絶しているということである。その断絶を何とか乗りこえて他者と行き交おうとする中で、私たちは他者の心という仮想を生み出す。それが、私たち人間が生きるということなのである。(p. 159)

他者の心は永遠に理解できない。しかしそれでもなお、わかろうとするからこそ、人間関係が生まれてくる。そこで僕らに求められるのは、他者について豊かな仮想をする力だろう。それは自らの心の豊かさにも通じるし、そこに豊かな人間関係が創造されるだろう。

しかし、豊かな仮想力をもつのは、そう簡単なことではない。コミュニケーションしているつもりが、実はディスコミュニケーションになってしまっている対話。このことを肝に銘じて、謙虚に他者と接しなければならない。

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コメント

エーリッヒ・フロムは「他者を理解することは出来ないが、他者を経験することができる」と書いています。

心の経験というのは、今風に言うと「気付き」と呼ばれるものだと思っています。

また面白い感覚なのですが、「人間は自分を経験するように他者を経験する」とも言っています。自分が分からない人間は他者も分からないし、自分に対して謙虚になれない人間は他者に対しても謙虚になれないということなんじゃないかなと思っています。

投稿: kiyo1977jp | 2006年2月 2日 12:13

そう、自分を見つめる目を持てなければ、他者も見えてこないと思います。

「仮想」でも「経験」でも、要はどこまで他者というものを、自分のなかでふくらませることができるかが問われるんでしょうね。

関係ないんですが、最近お気に入りの綾瀬はるかがドラマの「白夜行」に出ているので、木曜の夜はかかさず見ています。この人を見ていると、満ち足りた気分になります。これも仮想でしょうが、仮想が現実へ及ぼす力はすごいなあと、見終わったあと考えていました(仮想と現実の関係が茂木さんの本に書かれているので)。

投稿: マンデリン | 2006年2月 3日 00:08

> どこまで他者というものを、自分のなかで
> ふくらませることができるかが問われるんでしょうね。

おっしゃるとおりだと思います。日本でも小学生低学年くらいからこの辺の感覚というかロジックについて勉強してもいいんじゃないかなと思うくらいです。

マンデリンさんに触発されて(汗)茂木さんの本を読んで見たいと思うのですが。オススメってありますでしょうか?

実はビリージョエルの歌詞を調べていたところ Cafe Manderin さんのブログに出会ったのですが、数日後にはそれが縁でこんな事を聞いているのですからブログは面白いものです。

投稿: kiyo1977jp | 2006年2月 3日 01:24

ブログというツールは、ものすごい可能性を秘めていると思います。誰がどんなきっかけで縁することになるかわかりません。ネットを活用して、居ながらにして世界とつながるということは、素晴らしいことじゃないですか。

茂木さんの本は、2冊しか読んだことがありません。記事中に書いた『脳と仮想』(新潮社)と、『心を生みだす脳のシステム―「私」というミステリー』(NHKブックス)です。

前者は小林秀雄賞を取った書で、かなり文学・哲学の話が出てきます。この人、単なる科学者じゃないんですよね、すごいんですよ、この方面の知識が。中身は、「仮想」の重要性、「仮想」と「現実」についてなどです。

後者は、脳科学の研究をフォローしながら、「心」や「私」について一般読者に向けて書いています。

この人の一貫したテーマは、「脳の1000億の神経細胞が活動するだけなのに、なぜそこに、とらえようのない『心』というものが生じるのか?」です。どっちも面白かったですが、僕は前者のほうがより引き込まれました。他にも何冊か一般向けの本ありますよ。

投稿: マンデリン | 2006年2月 4日 00:00

お礼が遅くなって申し訳ありません。

推薦ありがとうございます。2冊とも読んでみたいと思います。複雑系や哲学分野は非常に好きなので楽しみです。あくまでサンデー哲学愛好者ですが…

また読み終わりましたら感想を書かせてください。失礼します。

投稿: kiyo1977jp | 2006年2月 7日 01:05

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